2017.12.21貸家・貸家建付地の評価 「一時的空室部分」の判断
貸家・貸家建付地の評価に関す「一時的空室部分」の判断が平成29年5月11日に大阪高裁でありました。
貸家・貸家建付地は、賃貸割合が高ければ高いほど評価を低く抑えられる(評基通26、93)、その賃貸割合は、一時的に空室状態の部屋も賃貸の状態にある部屋と扱うことができる。
この一時的な空室かどうかは、質疑応答事例「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」で以下の通り示されている。
①継続的に賃貸されていたか
②前賃貸人の退去後速やかに賃貸人の募集を行ったか
③空室の期間、ほかの用途に使用されていないか
④空室の期間が一か月程度の一時的な期間でるか
⑤賃貸が一時的なものではないか
これらの事実関係から総合的に判断する
あくまで総合的な判断となり、空室期間が一か月を大きくこえる場合でも、過去の裁決等で一時的空室と主張する実務家も多かっただ。
5月11日の大阪高裁は、一時的空室部分について「空室期間が重要な要素になることは明らか」と示し、最短空室期間の「5か月」は長期と指摘した。
高裁判決分より
「例外的な取扱いが認められるか否かを判断するに当たって、賃貸されていない期間(空室期間)が重要な要素となることは明らかである。そうすると、一時的空室部分該当性の判断に当たっては、現実の賃貸状況、取り分け、空室期間の長短を重要な要素として考慮しなければならないのであって、これを考慮せずに、本件各空室部分が「継続的に賃貸の用に供されている」状態にあるという理由のみで上記例外的な取扱いを認めることはできない。また、本件各空室部分の空室期間は、最も短い場合でも5か月であり、「例えば1か月程度」にとどまらずに、むしろ長期間に及んでいるといえるから、「一時的」なものであったとはいえない。」
としている。
今後、空室期間が「5か月」といった長期に及んでいる状況では、一時的空室部分に当たることを主張しにくくなると考えられる。税務調査等で「例えば一か月程度」を超えるような空室期間が税務署から有力な指摘材料になる